太陽光発電設備(動産)については動産譲渡、売電債権(債権)については債権譲渡をすることにより、金融機関等の債権者に担保を提供する方法があります。譲渡人(借入人)が法人の場合は、動産譲渡登記、債権譲渡登記をすることができます。
1 動産譲渡
①動産の譲渡担保
自身が所有している動産を金融機関等の債権者に譲渡して借入れを受けることを「譲渡担保」といいます。譲渡担保の存続期間(通常は返済期間)中、動産の所有権は債務者(借入人)から債権者に移り、存続期間が満了すると動産の所有権が債務者に戻ります。存続期間中は動産の所有権は債権者に移りますが、債務者は引続き動産を手元に残して使用することができ、債務者が返済を滞って担保権を実行されない限り、債権者に対象の動産を処分されることはありません。
②対抗要件・動産譲渡登記
動産譲渡を受けたことを第三者に主張する(これを「対抗要件」といいます。)には、債権者は、債務者から動産の「引渡し」を受ける必要があります。この「引渡し」に代わる方法が動産譲渡登記です。動産譲渡登記をすることにより、債務者から債権者へ動産の引渡しがあったものとみなされます。
動産譲渡登記の効果は動産の「引渡し」と同様であるため、動産譲渡登記の前に有効な動産の引渡しがあった場合は、先に引渡しを受けた譲受人が優先します。しかし、動産譲渡登記においては、登記の受付日時が登記事項証明書に記載されるため、引渡しの先後が明確になるというメリットがあります。なお、債務者が法人でなく個人の場合は動産譲渡登記ができないため、動産譲渡担保契約書に確定日付をもらう等の方法により、債権者が債務者から動産の引渡しを受けることになります。
2 債権譲渡
①債権の譲渡担保
借入人が第三者に対して有する債権(売電債権・売掛債権等)を金融機関等の債権者に譲渡し、借入れを受けることも「譲渡担保」といいます。借入人が債務の支払を滞ったときは、債権者は担保権を実行し、譲渡された債権の債務者(前記の第三者)から直接支払いを受けることにより、債権を回収することができます。売電債権のような将来発生する債権であっても譲渡可能です。
②対抗要件・債権譲渡登記
譲渡担保による債権譲渡を、第三者に主張する(対抗要件)には、債権の譲渡人(借入人)から譲渡された債権の債務者への通知または債務者の承諾が必要ですが、債権譲渡登記は、この債務者への通知または債務者の承諾の代わりになります。譲渡する債権の債務者に知られることなく、第三者に債権譲渡があったことを主張することができるという点が債権譲渡登記のメリットです。債権譲渡登記の場合、借入人の支払いが滞った際は、譲渡された債権の債務者に対し債権譲渡登記の登記事項証明書を交付して債権譲渡の事実を通知することで、債権者は譲渡された債権の債務者から直接支払いを受けることができるようになります。なお、動産譲渡登記と同様、借入人が法人でなく個人の場合は債権譲渡登記ができないため、債権譲渡を債権の債務者及び第三者に主張するには、原則通り債務者への通知または債務者の承諾が必要となります。
3 まとめ
太陽光発電事業に限らず、事業を行っている法人は、在庫商品、機械設備、燃料、生物等の動産や売掛債権等の債権をお持ちかと思います。土地や建物を借りて事業を行っており、不動産を担保に融資を受けることが見込めない場合は、法人の資金調達の方法の一つとして動産譲渡担保、債権譲渡担保(ABL)も考えられます。司法書士は動産譲渡登記、債権譲渡登記の申請代理も行います。動産譲渡、債権譲渡についてはお近くの司法書士にご相談ください。
司法書士谷麻由香事務所
牧之原市波津1323番地1
司法書士 谷 麻由香 氏