従前より砂防3法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)により、砂防事業としての砂防堰堤や床固工等の砂防施設の整備、急傾斜事業としての擁壁工や法面工等の崩壊防止工事の実施、地滑り対策事業としての集水井工や横ボーリング工、杭工等の地滑り防止工事などのハード対策を行っていますが、静岡県内だけでも約1万5000カ所の土砂災害危険個所があり、時間的にも費用的にもすべてのハード対策を行うには無理があります。
そこで、平成11年6月の広島災害(土砂災害発生件数325件、死者24名)の発生を受け土砂災害防止法が制定されました。
この法律により、土砂災害から国民の生命を守るために、土砂災害のおそれのある区域について危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策が推進されます。
土砂災害とは、具体的には以下の3つの自然現象をいいます。
・急傾斜地の崩壊
(傾斜度30度以上である土地が崩壊する自然現象)
・土石流
(山腹が崩壊して生じた土石等又は、渓流に堆積した土石等が一体となって流下する自然現象)
・地すべり
(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象)
土砂災害防止法に基づき、静岡県では危険個所の基礎調査を実施、砂防基盤を用い机上での調査を行い、机上調査の結果を基に現地で渓流や斜面など土砂災害により被害を受けるおそれのある区域の地形、地質、土地利用状況等について調査を行い、その結果に基づいて土砂災害のおそれのある区域等を指定します。
区域の指定については、土砂災害警戒区域(土砂災害のおそれのある区域)と土砂災害特別警戒区域(建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれのある区域)の2つの区域の指定がなされます。
基礎調査後の区域指定までには、指定基準・指定範囲についての地元説明→砂防課への意見聴取→各市町への意見聴取を経て指定公示となり、各市町での警戒区域の公示指定図書の縦覧、静岡県河川砂防局砂防課のホームページへ掲載されます。
静岡県では、危険箇所約1万
5000カ所に対して約1万カ所について公示を完了していますが、法律の制定から10年以上が経つにもかかわらず、特別警戒区域における規制等の条件のため区域の指定が全国的に遅れており、昨夏平成26年8月26日の広島県での土砂災害(死者74人を出す過去30年間で最多の人的被害)が発生しました。
このため、平成27年1月に土砂災害防止法の一部を改正し、基礎調査後に公示の手続きを待たずに、調査結果を公表することが都道府県に義務付けられました。これにより、危険個所の開示が早まり土砂災害警戒情報発令時の避難が早まるものと期待されています。
区域情報などの詳しい情報は、各市町の防災担当課、県の土木事務所、県庁砂防課へお問い合わせください。
静岡県行政書士会
農地土木委員 稲葉洋行