今年、旧安倍6村が旧静岡市との合併60周年を迎えた。「オクシズ」では今後、さまざまな催しが予定されている。2月17日には、静岡市葵区の梅ヶ島地区の情報を発信する施設「オクシズ コレクション梅ケ島」がオープンし、記念式典が行われた。梅ケ島に本社を置く㈱白鳥建設は、このオープンに合わせて梅ケ島にゆかりがある文学者・幸田文(あや)と吉井勇を紹介した石碑を寄贈した。白鳥勝平会長は、式典のあいさつで「梅ケ島は、豊かな自然や食材に恵まれているだけでなく、このような文化的な地域の歴史があることも知ってほしかった。多くの人にこの石碑を見てほしい」と語った。
「梅ケ島」に魅せられた2人の文学者
幸田文は、梅ケ島の「大谷崩」に注目した唯一の作家だといっていい。1976年5月に日本三大崩の一つ、大谷崩を訪れた幸田は、「あの山肌からきた愁いと淋しさは、忘れようとして忘れられず、あの石の河原に細く流れる流水のかなしさは、思い捨てようとして捨てきれず・・・」と、晩年の代表作「崩れ」の冒頭で大谷崩と安倍川の荒廃山河の姿に心うたれた様子を記した。
「命短し、恋せよ少女(おとめ)」のゴンドラの唄などで知られる、昭和初期の歌人、吉井勇。北原白秋と並び称される歌人だ。1939年、梅ヶ島温泉ホテル「梅薫楼」で滞在し、梅ケ島の温泉と豊かな自然に魅せられ、数々の作品を残した。仲間と湯の中や部屋で、大いにお酒を飲み歓談したという。3日間の滞在中、吉井が詠んだ梅ケ島の歌43首は、のちに「梅ヶ島遊草」として発表された。