ご質問における株式会社燒津銀行(以下、「燒津銀行」という。)は、株式会社明治銀行(以下、「明治銀行」という。)に合併され、明治銀行は商号変更を経た後、既に解散済みであるため、旧明治銀行の清算人の協力を求めて抹消登記手続をすべきでしょう。
①「休眠抵当権」を放置すると・・・
本事例のように、明治から昭和初期頃に設定された古い抵当権で現在も登記簿上抹消されずに残ってしまっているものは、いわゆる「休眠抵当権」と呼ばれています。「休眠抵当権」をそのままにしておくと、将来その土地を売却したいときに売却できない、その土地を担保にして金融機関から融資を受けたいときに受けられない、といった不都合が生じる可能性があります。登記は自ら申請するものであり、待っていても国や行政機関等が消してくれるわけではありません。できるだけ早いタイミングで抹消の手続をした方がよいでしょう。
②抹消するための方法
抵当権の抹消登記は、原則として、不動産の名義人たる所有者と抵当権者の共同申請によって行います。
しかし、ご質問のケースにおいて抵当権者である燒津銀行は、大正9年に明治銀行に吸収合併され、承継会社である明治銀行は、その後商号変更を経て、昭和16年に解散しています。
このような場合は、解散した承継会社の清算人を探し、生存していれば協力をお願いし、生存していなければ裁判所に新たな清算人の選任を申し立てることになります。本件抵当権の被担保債権は明治33年の貸金債権なので、債権の消滅時効にかかっていると考えられるため、清算人は通常、手続に協力してくれると予想されますが、もし協力が得られない場合は、抵当権者に対し訴訟を提起することになります。
ところで、燒津銀行の承継会社である旧明治銀行の閉鎖登記簿を確認すると、平成16年頃から、1名の同一の清算人が数ヶ月から数年おきくらいに選任されては選任決定を取り消され、また選任され、ということが何度も繰り返されています。これは、ご質問のケースのような休眠担保権を抹消するといった目的で、同一の清算人がたびたび選任され、手続が終わると選任決定を取り消されるということが繰り返されているためと予想されます。とすれば、その清算人が選任されているタイミングであれば、本件の抹消登記手続に協力を得られる可能性は高いでしょう。また、その清算人の選任決定が取り消されてしまっているときは、同じ清算人の選任を改めて管轄の地方裁判所に申し立てればよいと思われます。万一、その清算人が亡くなってしまっていた場合は、他に生存する清算人が居ないか確認し、生存する清算人が一人でも居れば、同じように協力を求め、居なければ、新たに別の清算人の選任を地方裁判所に申し立てることになります。
③まずは司法書士に
ご相談ください
いずれにせよ、まずはしっかりと不動産登記簿、商業登記簿等の調査をすることが先決です。司法書士が閉鎖登記簿を調査したところ、実は、過去に抹消登記されたはずの古い抵当権が、何かしらの理由で誤って現在の登記簿上残ってしまっているだけだった、ということもまれにあります。司法書士は、ご質問のような「休眠抵当権」の抹消登記を含む登記手続の専門家です。まずは一度司法書士にご相談されてみてはいかがでしょうか。
米澤司法書士事務所
焼津市小土1161番地
司法書士 米澤光芳 氏