権利書の再発行はできませんが、権利書が無くても不動産の売却はできますのでご安心ください。
1 権利書について
権利書は、法令上は「登記済証」という名称になります。不動産の売買による所有権移転等の登記が完了した際に、不動産の買主等登記名義人に交付される書面です。
この登記済証は、登記名義人が登記上の名義変更(所有権移転の登記)を申請する場合に、登記名義人からの申請であることを確認する資料として登記所に提出することから、一般的には「権利書」や「権利証」と呼ばれています(平成16年の法改正により、登記済証に代わって「登記識別情報」が発行・通知されるようになりましたが、登記識別情報やその通知書が紛失等した場合の代替手段についても基本的には同じですので、詳細な説明は本稿では割愛させていただきます)。
権利書はあくまで「登記名義人からの申請であることを確認する資料」の一つにすぎませんので、金券や商品券等とは異なり、紛失したからといって不動産の所有者であることを主張できなくなるわけではありません。
2 権利書を紛失した場合の登記手続きについて
権利書は再発行できません。権利書を紛失した場合は、他の手段を用いて登記名義人からの申請であることを証明することになります。
その手段としては3つの方法があります。①登記官による事前通知制度、②資格者代理人による本人確認情報の提供制度、③公証人による証明制度です。
①は、登記所から登記名義人の住所にあてて登記の申請があった旨の通知を行い、この通知に対して2週間以内に間違いがない旨の回答がなされることによって、登記名義人からの申請であることを確認する方法です。
②は、登記の申請を司法書士等の資格者に依頼して行う場合に、資格者が登記名義人であることを確認した書類を作成し、法務局へ提出する方法です。
③は、②と同様に公証人に登記名義人であることを確認した書類を作成してもらい、その書類を法務局へ提出する制度です。
これら3つの制度にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、登記申請の内容や当事者の属性等具体的な事情により、選択することができます。
3 まとめ
以上のように、権利書を紛失した場合には、他の制度を利用することによって不動産を売却することができます。
ただし、権利書は登記名義人からの申請であることを確認するための資料ですので、権利書が盗まれた可能性があり、なりすましの可能性が考えられるような場合には、不正登記防止申出の制度もあります。
権利書だけでなく、印鑑カードや実印も見当たらないような場合には特に注意が必要です。心配がある場合には、お早めに法務局又は司法書士にご相談ください。
司法書士あおいリーガル
静岡市葵区駒形通三丁目2番5−1号
司法書士 藤田佳久 氏