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弊社は、取引先から請求書などを書面で発行するのではなく電子ファイルで作成することを求められています。どのようにしたらいいでしょうか?また、この機に書類の保管についても電子化することを考えています。良い方法があったら教えてください。

2022/04/05 [04月05日号掲載]

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コンピュータで作成した請求書の電子文書に電子署名を付与し電子証明書とともに取引先に送信する方法や電子サービスの利用が考えられます。書類の保管については、e文書法や電子保存帳簿法に基づいて紙文章をスキャナで電子化して電子文書として保存する方法があります。

 

 

 

電子署名

 電子署名とは、電子データの改ざんを検知し電子データの作成者の身元を証明することのできる仕組みです。電子データの作成者の身元は、認証局が発行する電子証明書で確認できます。

 電子署名・電子証明書は発行元によって利用できる手続きが異なります。会社は、登記所に対して法人の電子証明書の発行を請求することができます。個人は、マイナンバーカードに電子証明書を記録することができます。これらの電子証明書は、民間取引のほか登記、e─TAX、社会保険・労働保険関係手続などの官公庁への申請手続きにも利用することができます。事業者が電子証明書を発行するサービスや、電子署名を付与するサービスもあります。事業者が発行するサービスによっては取引先の要望する手続きができない場合があるので注意が必要です。そのため、請求書や仕様書などに使用する電子署名・電子証明書の種類は、取引先に確認するのがよいでしょう。

 

電子サービス

 事業者が電子請求書の発行等を行う電子サービスも始まっています。このサービスの利用には、電子署名・電子証明書などは必要ありませんが、取引先も同じサービスを利用する必要があります。発行される様式は限定的ですが、今後拡大されることが予想されていますので、検討する価値はあるでしょう。

 

書類の保存

 e─文書法や電子帳簿保存法により、法令で書面での保存が義務付けられているもののうち国税関係書類、建築図書、医療情報、人事関係書類などが電子データで保存する方法が容認されています。

 作成された紙文書を、スキャナ等で電子化するのですが、解像度や色などの画像品質が十分に確保されていなければなりません。また、文書の種類によって「見読性」「完全性(真実性)」「機密性」「検索性」などの要件を満たしている必要があります。「完全性(真実性)」として建築図書や医療情報などは電子署名及びタイムスタンプが必須になります。タイムスタンプとは、電子署名した日時を信頼できる時間認証局が証明するものです。電子証明書やタイムスタンプには期限がありますので、法令で定められた文書の保存期間が長期にわたる場合はタイムスタンプを重ね掛けする長期署名が必要となります。

 

会社法関係書類

 会社法には、議事録、計算書類、株主名簿等の書面又は電磁的記録での保管義務が定められています。これらの書類が書面(紙文書)で作成されている場合は、原則として、e─文書法によってスキャナ等で電子化して記録媒体に保管する方法で足ります。ただし、取締役会議事録等、会社法で電磁的記録による作成の場合に電子署名の付与が求められるものは、電磁的記録(電子データ)に作成者が電子署名をしなければなりません。また、法律ではなく定款で電子署名をすることを規定している場合にも、電子署名を付与する必要が生じます。

 なお、取締役会議事録が書面で作成され、署名又は記名押印されている場合は、スキャナ等による電子化により電子文書(電子データ)とした場合には電子署名の付与は不要と考えられます。

 電子署名・電子証明書の種類や電子文書の保管方法については、細かい取り決めがあります。利用する際は、お近くの司法書士にご相談ください。

 

司法書士法人中央合同事務所

浜松市中区中央二丁目12番5号

司法書士 内納隆治 氏