法人の理事会に理事の代理人が出席し議決権行使することについては、これを禁ずる明文の規定は無いものの、認められないと解されています。
ですから、その理事が委任状を提出したとしても有効ではなく、出席者に数えることも議決権行使もできないと考えられます。
理事会欠席者がいる場合の
法人の対応
法人の理事は、本来はその個人的な資質や能力に着目して法人の業務執行及びその意思決定に参画することを委ねられた者ですから、理事自らが理事会に出席して討議を行い、その決議に加わることが想定されています。そのため、理事会への代理人出席及び代理議決権行使は認められないと解されているわけです。
しかしながら、急な事情で理事が理事会に出席できなくなることはあり得ます。その場合、理事会決議をどのように行えば良いのでしょうか。
理事会の決議は、議決に加わることができる(決議について特別の利害関係を有しないという意味です。)理事の過半数が出席し、その過半数をもって行います。そうすると、多少の欠席者がいても、出席できる理事が上記過半数に達していれば定足数を満たすので、理事会開催が可能です。もし、欠席するその理事の報告等が無いと内容の理解が難しい事柄があるようでしたら、その理事から説明を託された方をオブザーバーのような形で参加させても良いでしょう。
また、法人の定款に次のような定めを置くことで、理事会決議の省略が可能です。即ち、当該決議に加わることができる理事全員が書面又は電磁的記録によって決議事項についての提案に同意の意思表示をした場合に、その提案を可決する理事会決議があったものとみなす規定です。この方法によれば、理事が集合して理事会を開催しなくても、理事会としての意思決定をすることができます。
評議員会欠席者がいる
場合について
代理人による出席と議決権行使が認められないのは、一般財団法人の評議員会においても同様です。評議員も、個人的な資質や能力に着目して法人から委任を受けた者であり、自らが評議員会に出席し討議を経て議決することが求められているからです。この点は、代理人による議決権行使が可能な一般社団法人の社員総会や株式会社の株主総会等とは異なっています。
また、理事会の規律と似ていますが、評議員会の場合は法律の規定により、書面又は電磁的記録による全員の同意で決議の省略が認められています。
会議のオンライン開催
お尋ねのケースでは1名の欠席者でしたが、新型コロナ感染症に罹患して多数の理事や評議員が自宅待機で出席できず、定足数に欠けてしまうという事態も想定されます。先に述べた書面等での同意による決議省略も対応方法の一つですが、法人によっては、オンライン会議を実施する体制が執れるところもあるでしょう。同時双方向のコミュニケーションが可能といった条件などが必要と思いますが、理事会、評議員会開催方法についての有効な選択肢と考えられます。なお、オンライン開催した場合には、議事録の記載などにも注意して下さい。
司法書士山内将矢事務所
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司法書士 山内将矢 氏