事業承継にあたり、種類株式を使うことは大変有効です。議決権制限株式や拒否権付株式などの種類株式を発行し、緩やかに事業承継を進めることができます。これらの種類株式を発行するには、定款にその旨を定める必要があります。
自分が経営する会社の株式を保有したまま亡くなってしまった場合、その株式は相続として処理されることになります。本来であれば、長男にすべて引き継がせたいと思っていたとしても、何ら対策をとっていなかった場合は、他の相続人との協議がまとまらない限り、後継者となる長男に株式を集中させることはできません。協議内容によっては、株式が分散してしまうこともあり、スムーズな会社経営ができなくなることも考えられます。そのような事態にならないよう、予め準備が必要です。事業承継の対策はいろいろな方法がありますが、種類株式を使った対策も有効な方法の1つです。
1 種類株式
会社は、定款で定めることにより、内容の異なる2つ以上の株式を発行することができます。この内容の異なるそれぞれの株式を種類株式と言いますが、具体的には、①剰余金の配当に関する株式、②残余財産の分配に関する株式、③議決権制限株式、④譲渡制限株式、⑤取得請求権付株式、⑥取得条項付株式、⑦全部取得条項付株式、⑧拒否権付株式、⑨役員選任権付株式、これら9つの事項について、内容の異なる株式を発行することができます。
2 議決権制限株式
議決権制限株式とは、株主総会において、議決権を行使することができる事項について制限がある株式を言います。例えば、法令で定める一定の事項を除き、完全に議決権のない株式を発行したり、一定の事項についてのみ議決権を行使できる株式を発行することも可能です。議決権制限株式を発行した上で、後継者となる長男には議決権のある株式を、その他の相続人には議決権のない株式を、少しずつ譲渡し、自分の保有する株式の議決権数を調整しながら緩やかに事業承継や相続対策を進めることが可能です。合わせて議決権のある株式は、長男に相続させるよう遺言書を作成しておけば安心です。
3 拒否権付株式(黄金株)
自分の保有していた株式を後継者となる長男に早めに譲渡したいと考えるものの、まだ、後継者の経験が浅く、会社経営に不安を感じることもあるかと思いますが、そんなときは、拒否権付株式の利用が有効です。予めこの拒否権付株式を1株発行し自分で保有しておけば、他の株式を後継者に譲渡したとしても、定款に定めた一定の事項について、株主総会での決議に対して、種類株主総会として拒否することが可能となります。会社が間違った方法に進まぬようコントロールすることができます。どのような事項について拒否権を定めるのか、また、自分が亡くなったときに、その株式が会社経営に関係のない相続人の手に渡ってしまわぬよう、十分な検討と対策が必要です。
これらの種類株式の活用は、非常に有効な事業承継の手段となります。種類株式を発行するには、定款変更と登記が必要になります。活用を検討される場合は、ぜひ司法書士にご相談ください。
司法書士山崎敏弘事務所
静岡市清水区渋川497番地の1
司法書士 山崎敏弘 氏