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私は、会社経営をしていますが、長男が後継者として引き継ぐ準備をしている最中です。私に万が一があった場合には、相続人は、妻と長男、次男の3名になります。長男と次男は非常に仲が悪く、相続争いになってしまうことが心配でなりません。何か良い対策はありますか?

2024/03/05 [03月05日号掲載]

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何も準備をすることなく相続が発生してしまった場合には、相続人間での遺産分割協議によって、遺産の引き継ぎ先を決めることになります。一方で、遺言書を残しておけば、相続人の意思ではなく、遺言者の意思が優先されますので、相続争いになりにくいメリットがあります。

 

 

1会社経営者が

 保有する株式対策を

 会社の株式を保有している会社経営者に相続が発生した場合、株式の引き継ぎ先について相続人間で争いが生じてしまうと、従業員やその家族にも影響が生じる可能性があります。そうなると、会社経営は不安定となり、取引先にも迷惑がかかりますので、生前の株式対策は、経営者としての重要な仕事のひとつと言えます。

 

2生前対策としての遺言書

 遺言書には、様々な種類がありますが、①自筆証書遺言と②公正証書遺言が主に利用されています。

①自筆証書遺言

 自筆証書遺言とは、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印して作成された遺言を言います。もっとも、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合には、目録については自書する必要はなく、目録ごとに署名・押印すれば良いことになっています。なお、押印は実印である必要はありません。

 そして、相続発生後は、遺言の保管者又は相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求する必要があります。

 ただし、令和2年7月10日から施行された法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、家庭裁判所の検認は不要になります。

②公正証書遺言

 公正証書遺言とは、証人2名以上の立ち会いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がその内容を書面にして、遺言者及び証人並びに公証人が署名・押印することによって作成された遺言書を言います。

 自筆証書遺言とは異なり、全文を自書する必要がなく、家庭裁判所の検認も必要ありません。

 

3遺留分に注意

 遺言書があれば、遺産の引き継ぎ方法として、相続人の意思ではなく、遺言者の意思が優先されますが、「遺留分」には注意が必要です。

 遺留分とは、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことを言います。残された遺族(兄弟姉妹以外の相続人)の生活保障のために認められています。

 この留保分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを侵害者に対して請求することができます。

 具体的な侵害額の計算は事例によって異なりますが、今回の事例では、「財産の価額の2分の1」×「相続人の法定相続分」によって計算されます。次男の法定相続分は、4分の1ですので、8分の1が次男の遺留分割合となります。

 したがって、次男が遺言の内容に納得しない場合には、財産の8分の1相当分までは、権利の主張をすることができます。

 

4遺留分への具体策

①生命保険による対策

 遺留分の請求を受けたら金銭を支払う必要があります。長男に生命保険金が支払われるように準備をしておくことも選択肢のひとつです。生命保険は、遺留分侵害額請求の場面においては、相続財産には含まれないメリットもあります。ただし、あまりに不公平な結果になる生命保険の活用は、遺留分侵害額請求の対象とされる可能性がありますので注意が必要です。

②養子縁組による対策

 次男の遺留分を減らしたいのであれば、長男の妻や子を養子にして、次男の法定相続分割合を減らすことによって、遺留分割合も減らす方法があります。ただし、あからさまな養子縁組は、次男の父親に対する想いに影響を及ぼしかねませんので、心情面への配慮が求められます。

③株価対策

 株価が高ければ、遺留分侵害額も高額となりますので、生前に株価を下げる方法をはじめ、事業承継策を練っておくことも選択肢のひとつになります。

 

司法書士エイト総合事務所

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司法書士 八木良直 氏