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ビジネス法務

私は、主に冷凍マグロの販売・仲卸を行う会社を経営しております。今般金融機関から新たに融資を受けたいと考えておりますが、担保に提供できる不動産を所有しておりません。他の方法で融資を受けることはできないのでしょうか。

2014/06/05 [06月05日号掲載]

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A 会社の所有している冷凍マグロなどの動産を担保として金融機関に譲渡することにより融資を受ける方法が考えられます。

1 はじめに  一般的に、金融機関等が事業者に対し融資をする場合、事業者や代表者が所有する不動産に対して担保権(抵当権や根抵当権)を設定することを条件としてなされます。不動産が担保に選ばれるのは、不動産は価格の変動が少なく買い手が付きやすいために、競売を行えばその不動産の売却益から残債務の回収を容易に図ることができるからです。そのため、起業したばかりの事業者やすでにある程度の融資を受けている事業者等は、担保に提供できる不動産が乏しく、この方法では融資を受けることが難しい場合があります。

2 動産譲渡担保  そこで利用が期待されるのが動産を担保にする方法です。具体的には、事業者の有する動産を融資を行う金融機関等の債権者に譲渡し、それを担保として融資を受け、債務の弁済が滞った時には債権者は譲り受けたその動産を自らの所有物として利用したり、処分してその売却益から残債務の回収を図るといった方法をとります(その形態から「動産譲渡担保」とよばれます)。担保を取るに際し、その動産の所有権を債権者に譲渡する点で不動産を担保にする場合と大きく異なりますが、譲渡するといっても物理的に実物を債権者に引き渡すことは必ずしも必要ではなく、動産を担保に提供したとしても所有権は債権者、実物は債務者が保有する形態で、不動産を担保にした場合と同様にその動産を利用して事業を継続することができます。

3 集合動産譲渡担保  また、担保にする際に、不動産と異なり担保にする動産を一つ一つ特定せず事業者名や保管場所等で包括して特定して、「○○倉庫内に保管されている動産すべて」といったように一括して担保とすることもできます。この形態をとれば、譲渡担保の契約以降、仕入れ等で新たに入ってきた動産は当然に担保に含まれることとなり、出ていく動産については特に手続きを取ることもなく自由に売却等処分することができます(これを「集合動産譲渡担保」といいます)。

4 注意点  以上のような方法をとれば、不動産を担保としなくても融資を受けることは可能ですが、不動産と異なるために注意する点があります。  一つは、動産は、不動産と異なり、その実物の移動が容易で第三者が関係することが多く、また現在の所有者が分かりづらいことから、法律上その動産を保有している者を所有者として信じた第三者がその動産の所有権を取得できる場合があり、債権者からすると担保を失う危険性があります。そのため、債権者は「動産譲渡登記」という制度を利用し、第三者に対し、担保である動産の所有者が自分であることを公示する必要があります。この制度は、不動産における登記と同様に、譲渡人(債務者又は担保提供者)と譲受人(債権者)が共同して特定の動産について現在の所有者が誰であるかを登記することによって、第三者に対し、動産の所有関係を知らせ、前記のように債権者が担保を失う危険を排除することができます。但し、譲渡人が法人でなければ利用できない点に注意が必要です。  また、動産は基本的に価値の把握が難しく、変動の幅も大きいため、担保に取る動産の種類と担保価値の計算に注意が必要です。融資後についても、動産は移動させやすいため、損傷・損壊による価値の減少をはじめ、破棄・隠匿にも注意が必要です。そのため、融資前後を通じて予防及び事後処理のために契約内容を吟味する必要があります。

 

司法書士法人ひまわり 静岡市清水区草薙一里山6番20号 司法書士 山田晃一 氏