静岡県工業技術研究所(静岡市葵区牧ヶ谷2078、田中進所長)の上席研究員である山下里恵氏が、公益財団法人中部科学技術センターが実施した平成26年度中部公設試験研究機関研究者表彰において、研究功績者として会長賞を受賞した。
この表彰は毎年中部地区8県の公設試験研究機関研究者を対象とし、地域産業発展に寄与する功績を評価し行われているもので、本年度は所長賞2名、会長賞4名が表彰された。
山下氏は「分子ふるい炭素による有害物質の選択除去とアロマ製品群等の開発」での功績が認められた。炭の焼成技術や賦活(活性化)処理によって、炭の表面積や微細な穴の組織の形状を最適な状態に調整し、人間にとって好ましい「香り」を残しながら、避けるべき「有害物質」を選択的に吸着除去する、という活性炭の「分子ふるい機能」を利用したものだ。
この技術は、室内空気中の有害化学物質を除去するインテリア製品や、柑橘類が含む光毒性成分を選択除去した、人の体に優しい練り香水等の製品化に大きく寄与し、県内企業の商品開発を力強く後押しした。
山下氏は慶応義塾大学理工学部応用化学科を卒業後、静岡県衛生環境センター、静岡県富士工業技術センター(いずれも当時の名称)に勤務し、平成13年より静岡県工業技術研究所で研究活動に従事している。「もともと環境の計測を行っていまして、有害化学物質に関する技術相談に対応する中で、過去の多くの研究成果から集積した情報が『炭の分子ふるい機能』に着目させてくれました」と経緯を振り返る。
今後この技術を活用して「香りに関連する炭の機能を多面的に発揮できるよう可能性を追求したい。“冷涼感”など五感+αの感覚にも可能性があると考えています」という。同研究所では他にもコーヒーの残さを活性炭化し活用する取り組みが進んでおり、山下氏がさらに活躍の範囲を広げていくことが期待される。