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株式会社の社長として会社を経営しております。役員変更登記などの登記を怠りなく正しく登記することは、大変大切なことだと承知しておりますが、不正・不当な目的をもって、赤の他人に当社の役員変更登記などされ、会社を乗っ取られる恐れなどないのでしょうか。

2016/08/05 [08月05日号掲載]

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ご質問については、過去に行われた不正・不当な登記防止のための登記手続の改正経緯をご理解されますと、役員の登記の真正を担保する登記手続きの仕組みが判り易いのではと思います。

そのうえで、ご安心いただけるものと思います。

 1「取締役会議事録」についての改正

 新たに代表取締役を就任させる登記の申請書には、昔から就任したことを証するために、「取締役会議事録」および「就任承諾を証する書面」を添付しなくてはならないのですが、以前はこれらの添付書面の「真正を担保」するための措置が規定されておらず、そのため、第三者が、「取締役会議事録」を偽造して、会社を売買し、または乗っ取る事件が多発しました。そこで昭和42年9月1日次のとおりの改正がなされました。

 出席した取締役及び監査役が代表取締役選出の「取締役会議事録」に実印を押印し、印鑑証明書を添付しなければならない。ただし、この「取締役会議事録」に押した印鑑が、変更前の代表取締役が法務局に登録している印鑑と同一であるときは、印鑑証明書の添付を要しない(もはや、「真正が担保」されているから)。

 2「就任承諾を証する書面」についての改正

 右記の改正においては、代表取締役の「就任承諾を証する書面」の「真正を担保」するための措置が講じられなかったため、またもや、著名人等他人の氏名を冒用した代表取締役の就任登記がされる事例が多数発生し、新聞報道にも大きく取り上げられました。このようなことから、昭和48年3月1日には次のような改正もなされました。

代表取締役の「就任承諾を証する書面」につき、再任の場合を除き、実印を押印し、市区町村の印鑑証明書を添付する。ただし、「取締役会議事録」に代表取締役に選定された方が就任承諾した旨の記載があり、当該代表取締役の印鑑証明書の印鑑が押されている場合は、就任を承諾する書面の添付を省略できる。

 3「代表印の登録」についての改正

 現在、会社の登記の申請をするときには法務局にすでに登録済みの貴社の「代表印」を申請書に押印し、司法書士が申請する際は、委任状に「代表印」を押印して申請しなければなりません。登記を受け付けた法務局は、この押印された「代表印」が登録済みの「代表印」と同一か否かを必ずチェックします。これによって、登記の「真正を担保」しています。

 ところが、昭和48年3月1日より前の登記手続きでは、この「代表印」の印鑑登録および改印の際には、保証人2名が印鑑を保証する方式によりなされており、不心得な第三者が、虚偽登記を申請するための前提として、虚偽の保証人と通謀のうえ、本人の知らぬ間に虚偽の改印届をする事例が発生し社会問題ともなりました。

 そこで、昭和48年3月1日から次のとおりの改正がなされました。

代表者印の印鑑届及び改印届をするには、「代表者自身の市町村作成の三カ月以内の印鑑証明書」を添付するものとする。

 4 「本人確認証明書」についての改正

 なお、平成27年2月からは、新たに取締役・監査役等の就任に関しても、当該役員の住民票の写しあるいは運転免許証の写し等を添付することにより、代表取締役以外の役員につきましても、ますます「真正を担保」する登記手続きへと改正されています。

  以上のように、社会情勢・時代背景の変化に対応し、数々の改正を重ねてきました。 現在において、過去の事案のようなことが生じる恐れのない安全装置が登記手続きに構築されていると考えております。

 大丈夫です。安心してください。

 ただし、個人の実印・代表印・印鑑カード等々を大切に保管してください。