インターネットで商品を注文したのが実際にその息子である場合、未成年を理由とした取消しにより、代金を返還しなければならない可能性があります。
1 商品売買契約の当事者と
クレジット契約の当事者
クレジットカード決済による商品売買契約は契約関係が複雑となります。まず、関係当事者を整理してみましょう。次の図をご覧ください。
⑴実際に商品を注文した息子(Sとします)と貴社が「商品売買契約」の当事者となります。
⑵一般に、クレジットカード名義人は、カード発行会社と会員契約を結んでいます(いわゆる「クレジット契約」)。
ご質問のケースでは、クレジットカード名義人である父親(Fとします)とそのカード発行会社(Iとします)が「クレジット契約」の当事者となります。
⑶貴社と決済代行業者、決済代行業者とそのカード会社(Aとします)が各「加盟店契約」の当事者となります。
2 未成年者取消権
⑴はじめに
民法は満20歳を成年とし、未成年者が契約をするには原則として法定代理人(主に親権者)の同意が必要であり、その同意がない場合には契約を取り消すことができると定めています。これがいわゆる「未成年者取消権」です。
経済産業省発行の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(いわゆる「電子商取引準則」)では、未成年者取消しの主張が可能な例として、「未成年者であるかどうかの確認をしていないケース」、「単に『成年ですか』の問いに『はい』のボタンをクリックさせる場合」が挙げられています。
仮に貴社の申込受付画面がそのような場合、商品を注文したのが実際に未成年の息子Sであれば、息子S又はその両親は、原則として未成年を理由に契約を取り消すことが可能です。
⑵法定代理人の同意
これに対して、未成年者が法定代理人の同意を得て契約した場合、その契約を取り消すことはできません。
この点、電子商取引準則では、申込受付画面や利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載してあるのみでは必ずしも法定代理人の同意は推定されないとしています。
したがって、貴社が未成年者取消しによるリスクを回避するためには、別途電話や郵送等で法定代理人の同意を確認する等の手段を検討する必要があるでしょう。
⑶未成年者の詐術
また、未成年者が取引の相手方に対し、成年である又は法定代理人の同意があると誤信させるため「詐術」を用いた場合、その契約を取り消すことはできません。
この点、電子商取引準則では、単に年齢確認画面や生年月日記入画面に虚偽の年齢や生年月日を入力したという事実のみをもって「詐術を用いた」とは断定できないとしています。
したがって、未成年者が「詐術」を用いたと評価できるだけの、未成年者が容易にかいくぐることのできない仕組み(例えば、本人確認書類を送付させる)等をさらに検討する必要があるでしょう。
⑷取消後の法律関係
未成年者取消しがされると契約は遡って無効となります。契約により既に商品の引渡しや代金の支払いがされていた場合、各当事者はそれらを返還する義務を負うことになります。
したがって、ご質問のケースでは、契約が取り消された場合、貴社は受領した代金7万円を返還する義務を負い、息子Sは引渡しを受けたゲーム機とゲームソフトを返還する義務を負います。
3 司法書士にご相談を
インターネット取引のような非対面取引において、未成年者取消しは取引リスクとなります。司法書士は、このような取引リスクを回避ないし軽減するための事業者からのご相談にも応じます。是非ご利用ください。
浜松市浜北区小松10番地の2
司法書士 柴田泰光 氏