売掛先との関係が良好であれば売掛先に噂の真偽を確認するとともに支払い方法について交渉することをお奨めしますが、交渉ができない状況に至っているのであれば仮差押等の法的手段を検討する必要があります。
倒産は突然やってくる
「火の無い所に煙は立たぬ」と言われるように、まったく根拠もなく倒産の噂は出ないものです。また、倒産は予告なく訪れます。倒産が事前に予告されることはまずありません。
ところで、「倒産」と言っても、破産申立て等の法的手続きが採られるケースばかりではなく、むしろ、手形不渡りや夜逃げなどによる事実上の事業停止に至るケースの方が多いと思われます。しかし、いずれの場合も、実効性のある担保や保証人を取得していない限り、倒産後に売掛金を回収するのは困難です。そのため、倒産が近いという噂が耳に入ったのであれば、直ちに対処する必要があります。
噂の根拠を確認する
まず、倒産の噂の根拠を確認する必要があります。懇意にしている売掛先であれば訪問して事業所の様子を確認してみてはいかがでしょうか。社長が資金繰りのために不在がちであったり、金融機関や取引先などから支払い催告の電話が頻繁に入っているようでしたら噂は本当かもしれません。
また、その会社や代表者の所有している不動産の登記事項証明書も調査する必要があります。高利貸しと思われる業者に対して担保を設定していたり国税等の差押えがされているようでしたら本当に危険な状態であるかもしれません。
交渉可能であれば
債権譲渡等を検討する
信用状態が相当悪化している場合、もしも交渉が可能であれば、売掛先が第三者に対して有している請求権(売掛金、請負代金、賃料等の請求権)を譲り受けるという方法が考えられます。また、代金の支払いに代えて売掛先が所有する機械器具等の所有権を代物弁済として譲渡してもらうということも考えられます。しかし、売掛先がこれらの要求に応じると、そのことにより事業の継続が困難になることが多いため、一般的にはこうした方法により回収できるケースは多くありません。
仮差押えを検討する
交渉ができない、または交渉が成立しない場合には仮差押えを検討する必要があります。「仮差押え」とは、訴訟を提起する前に一定の財産を差押さえておく手続きで、訴訟を提起して判決を得るまでの間に相手方が倒産してしまったり財産を隠匿してしまうおそれがあるなど、債権を保全しておく必要がある場合に認められます。しかし、差押える財産を特定しなければならないため(例えば、債権であれば、誰に対するどのような内容の債権か)、ハードルは決して低くはありません。
日頃から与信管理を徹底する
以上のとおり、ご質問のケースでは採りうる方法は限られてしまいますが、そうした事態に陥らないように日頃から取引先の与信管理(売掛先の経営状況の把握)を徹底する必要があります。そして、売掛金の支払いが遅れた場合には、すぐに相手方と交渉して早期に未収金を回収するとともに、現金取引に変更するなど今後の取引条件を見直すことも検討すべきでしょう。
司法書士法人中央合同事務所
浜松市中区中央二丁目12番5号
司法書士 古橋清二 氏