内容証明郵便は、相手方に送った内容と同内容のものが郵便局に一定期間保管される特殊な郵便です。発信日の記録も残り、裁判においても証拠力の高い資料として取り扱われるため、重要な意思表示をするような場面では、内容証明郵便の利用が推奨されます。具体例は次の解説を参考にしてみて下さい。
■内容証明郵便の出し方
内容証明郵便は、送り先が1カ所の場合、同じ文書を3通(相手方に送る分、自分の手元に残る分、郵便局に保管される分)作成し、封をせずに郵便局に持ち込みます。送り先となる相手方が複数ある場合には、用意する文書の通数を相手方の分だけ増やす必要があります。なお、文書の作成に当たっては、1ページに収められる文字数や行数に制限がありますので注意が必要です。
また、配達証明書の発行をオプションとして追加することが可能です。配達証明書をつけると、その内容証明郵便が相手方に配達された日付の証明書の発行が受けられますので、利用することをお勧めします。
■内容証明郵便の効果
内容証明郵便の直接的な効果は、送付した文面の内容が証明されること、発信した日付が残ること、そして配達証明書により相手方への到達した日付が残ることにあります。では、具体的にどんな場面での活用が可能でしょうか。
■具体例① 〜売掛金の再請求〜
もっとも内容証明を利用する機会が多いのは、予定の支払日を過ぎても売掛金が支払われないような場合に、再度請求をする場面でしょう。内容証明郵便では、その内容が郵便局に保管されるので、相手方は再請求を受けていないとの言い逃れができません。
内容証明郵便が相手に届いたからといって、相手方に新たに支払い義務が生じたり、財産の差押えができたりするわけではありませんが、一般的には「内容証明郵便によって請求される」ということは、一般の書留郵便や、FAXやメールで再請求されるのとは異なり、相手方に一定の心理的効果が生じることも期待できます。実際、内容証明郵便で請求をしたところ相手の対応が変わったということも少なくありません。
■具体例② 〜滞納家賃の催告〜
アパート経営をしていると、家賃滞納により契約を解除して退去を求めることもあるでしょう。話し合いで退去に応じてくれればよいのですが、家賃を滞納するくらいですから引越費用が工面できないなどの理由で退去に応じてもらえないということも少なくありません。この場合は、裁判により退去を求めることになります。
賃貸借契約書には2〜3カ月程度の滞納があれば即時解除できる等の規定があることが多いですが、裁判ではこの規定通りには認められません。あらかじめ滞納家賃を支払うよう裁判外で請求し(「催告」と呼びます)、催告から相当期間(通常は3日程度)経過後に解除が可能になります。
裁判では、いつ催告したか、いつ解除が可能となったかを証明する必要がありますが、催告を内容証明郵便で行うことで可能となります。
■具体例③ 〜貸付金の催告〜
貸付金の返済を裁判により求める場合には、返済期日がいつであるかを証明する必要があります。借用証書などに返済期日が定められていればよいのですが、定められていないことも珍しくありません。この場合には、催告がされてから相当期間が経過すると返済期日が過ぎたことになります。滞納家賃の場合と同様に内容証明郵便で催告するとよいでしょう。
■まとめ
紙面の都合で紹介できませんでしたが、他にも時効完成を阻止する場合、悪質事業者に対してクーリング・オフを主張する場合、また、遺留分減殺請求をする場合などにも内容証明郵便の利用が有効です。このような法的トラブルに遭遇してしまったときには、一度お近くの司法書士にご相談ください。