会社の事業年度は登記すべき事項ではないので、変更が生じたからといって登記をする必要はありません。しかしながら、事業年度を変更することで役員の任期に影響が及び、役員変更の登記を要する場合があります。事業年度の変更の際は、役員の選任漏れにご注意ください。
■事業年度の変更は株主総会で
決めればいいの?
事業年度は定款で定める事項ですので、これを変更する際は株主総会の特別決議を要します。定款は会社の取扱説明書のようなものであり、背骨のような存在です。このため通常の意思決定ではなく、重要な意思決定の際に用いられる特別決議で決します。
特別決議では、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が決議に参加し、参加した議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。なお、定款でこれらの要件を一定の限度で変更することもできますので、会社の定款を併せて確認し、株主総会に臨みましょう。
■事業年度を変更すると
役員変更登記を要する場合が
あるってどういうこと?
ここでは取締役の任期について考えてみましょう。会社法は次のように定めています。「取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」取締役の任期は、定款で別段の定めを置かない限り原則として2年となっていることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。しかしながら、2年目のいつまでか、という細かな点は意外と知られていません。二重線のところを見ていただくと、事業年度と定時株主総会が任期に関係していることがわかります。
では、定時株主総会について、会社法ではいつ開催すると定めているでしょうか。「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」とあります。会社に出資している株主にとって、会社のお金が正しく使われているか否かは極めて重要な点です。そこで、事業年度ごと株主に決算概要を説明し、承認を得る場を規定しています。それが定時株主総会です。多くの会社では決算期の末日から2、3カ月以内に開催されているのではないでしょうか。
したがって、選任された日からちょうど2年経った日に任期満了を迎えるわけではなく、定時株主総会終結時に任期が満了するわけです。
ということは、事業年度を変更することで決算の承認を受ける定時株主総会の開催時期も変わり、取締役の任期満了日も変わってしまうことになります。たとえば、本来であれば任期満了までにまだ数カ月残っている取締役であっても、事業年度を短縮する定款変更により直ちに任期満了を迎えるということもありえるわけです。
事業年度を変更することがなぜ役員の任期に影響するのか、その仕組みについてご理解いただけましたでしょうか。
■影響を受けることは分かったが、
事業年度を変更すると
当社の場合はいつになるの?
会社が事業年度を変更するにあたっては、変更後の最初の事業年度を1年6カ月まで伸長することが認められています。変更後の最初の事業年度を短縮するのか、伸長するのか、定款変更のタイミングがいつか等により、任期満了日に違いが出てきます。
それにしても・・・随分ややこしいですね。そんなときは司法書士にお任せを!事業年度の変更をする際は、是非ご相談ください。