近年、ベンチャー企業の設立に合同会社が多く利用されています。合同会社であれば、株式会社と異なり、会社の定款で業務執行の方法、社員の入退社、剰余金の配当等の様々な事項について、その内容を柔軟に定めることができるため、株式会社では行えない形態での会社経営を行うことができます。
1 合同会社とは
合同会社は、会社法上の持分会社という会社形態の一種です。
持分会社とは、株式会社とは異なり、出資者と経営者が同一の会社形態を指します。株式会社は、出資者(=株主)と経営者は別個であることを原則としていますが、持分会社は、出資者(社員)と経営者が同一、つまり、株式会社でいうところの株主が会社の経営も行うこととなります。このため、持分会社では、社員が直接会社の重要事項を決定することができるため、株式会社に比べ迅速な意思決定が可能となります。
合同会社は、その持分会社の中でも、会社と取引をする第三者等に対する対外的な社員の責任が、その社員が出資した価額の範囲に限定(=有限責任)される会社形態です。
2.定款自治
会社が法律の範囲内で会社の基本的ルールである定款を作り、それに基づき運営を行うことを「定款自治」と言います。
合同会社では、株式会社とは異なり、会社の業務執行や社員の入退社等の重要事項について、法律で定められた原則の例外として会社の定款で比較的自由に別段の定めをすることができるとする規定が多くあります。これにより合同会社では様々な事項につき広く柔軟な対応をすることができます。
例としては、会社の業務執行について、法律上の原則は社員の過半数によってこれを決定しますが、仮に、定款に「特定の社員が単独で業務を執行する」という別段の定めをすれば、当該社員の一存で会社の業務を行うことができます。
また、会社に利益が出た場合の剰余金の配当や残余財産の分配について、法律上の原則は各社員の出資の価額に応じて配当されますが、例えば定款に「特定の社員が他の社員に優先して配当を受けることができる」と定めれば、特定の社員が他の社員に優先して配当を受けることができます。
この点、株式会社においても、種類株式等を利用して同様の形態をとることもできますが、株式会社においては株主を平等に扱わなければならないため、同じ種類の株式を有する株主は同じように扱わなければならず、合同会社のように特定の社員だけ優先するといったことはできません。
上記定款の定めを組み合わせると、例えば質問のように社員ごと高い集客力がある独自の技術や商品を持っている場合、出資比率が小さくても会社への貢献度合いが高かった社員に、出資比率以上の利益を配当することや会社内の発言力を強くすることが可能となり、会社内部でパワーバランスを調整できる会社形態も可能となります。
3.その他
以上の他に、合同会社は、設立に際し、株式会社に比べ、設立費用や手続きに要する期間を抑えることができます。
また、合同会社は、組織変更の手続きを取ることにより株式会社へ移行することができます。そのため、資金の乏しい設立段階では経費削減のために合同会社として設立し、事業が軌道に乗り、大々的に資本を集める必要が生じた場合には株式会社へ移行するといったことも可能です。
4.最後に
合同会社は、株式会社と異なる利点を持った会社形態であり、さまざまな利用形態が想定できます。
そのため、目的とする事業内容や経営形態により、株式会社より合同会社のほうが適当な場合もありますので、会社設立や新規事業立ち上げの際はぜひお近くの司法書士にご相談ください。
司法書士法人ひまわり
静岡市清水区草薙一里山6番20号
司法書士 杉山淳一 氏