離婚には夫婦の話し会いによる協議離婚、話し合いが決裂した場合や応じてもらえない場合は調停申立、調停が不成立の場合は裁判という手続きがあります。取決めとして、婚姻費用の算定(まとまらない場合は婚姻費用の分担請求調停)・財産分与・慰謝料請求・年金分割・子の親権・養育費などについて検討しないといけません。登記関係手続きについては、解説をご覧ください。
①離婚の9割は協議離婚
離婚には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。
日本で成立する離婚の9割が協議離婚です。協議離婚は話し合いで夫婦の双方が離婚に合意し、離婚届を提出して受理されれば、手続きが完了します。
協議離婚する際に、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割など、金銭の支払いについての取決めをすることがあります。この場合、口約束だけでなく、離婚協議書を作成しておくべきです。離婚協議書は当事者間で作成することもできますが、公証人役場で公正証書にしておくのが良いでしょう。強制執行受諾文言が付された公正証書には金銭の支払いが滞ったときには、裁判手続きなどをすることなく、ただちに相手方の財産に対して強制執行ができる効力があります。
②財産分与について
財産分与とは、婚姻後に夫婦で築いた財産を離婚時に分け合うことをいいます。収入のない専業主婦や、離婚の原因をつくった有責配偶者であっても、請求できます。
財産分与の対象となるのは、婚姻後の夫婦共有財産です。主なものに、現金、預貯金、不動産、自動車、生命保険、株式・債券があります。婚姻後に貯めたへそくりや、既に支払われた、あるいは将来支払われることがわかっている年金、退職金も含まれます。ローン、借金などのマイナスの財産も共有財産とされています。一方、婚姻前から所有している財産や相続で取得した財産などは個人の財産とされ、財産分与の対象ではありません。このような財産を特有財産といいます。
③不動産の財産分与
婚姻後に夫婦が取得した財産は財産分与の対象になります。分与した財産が不動産である場合、財産分与による所有権移転(登記名義変更)をしておく必要があります。住宅ローン付不動産の場合、「所有者が夫、債務者も夫」という不動産を妻に名義変更しても、債務者は夫のままです。住宅ローンの扱いについてどのようにするか、不動産の評価額・ローン残高などにも注意しながら検討が必要です。
④その他の注意点
財産分与する者(分与者)が離婚に伴い氏を変更している場合や、住所を異動している場合は、財産分与による所有権移転の前提として、氏名・住所の変更登記をすることが必要です。
会社の役員になっている方について、離婚に伴い、氏名・住所に変更が生じる場合や、同族会社の役員のため、離婚に伴い任期の途中で辞任する場合は、内容に応じた変更登記を行います。
⑤まずは、お早めにご相談ください
財産分与による名義変更ができるのは、離婚成立(離婚届の提出)の後です。とくに、協議離婚の場合には、離婚届を提出してしまうと、相手方に登記手続きへの協力を求めるのが難しい場合もあるでしょう。離婚協議書の作成、登記必要書類の準備など事前に済ませておくことがありますので、離婚届を提出する前に、まずは司法書士にご相談ください。
司法書士しずかぜリーガルオフィス
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司法書士 山本剛史 氏