令和3年2月15日から、定款認証と会社設立登記の申請をオンラインで同時に行うことが可能となりました。また、一定の要件を満たす場合には、原則として24時間以内に登記を完了することになっています。しかしながら、いくつか条件がありますので、注意が必要です。
1 会社設立登記までの流れ
通常、①基本的項目の決定②定款作成③定款認証④資本金払込み手続⑤登記申請、という流れとなります。一般的に、②〜⑤までに2〜3週間の期間が目安となります。その期間を短縮するためには、①の基本的項目を早期に確定させ、この流れと手続きを把握してから着手することが肝要です。
①の基本的項目とは、定款に記載する項目や登記事項のことです。例えば、会社の名称(商号)、会社所在地、事業目的、事業年度、役員構成、資本金、発起人(最初の株主(出資者))などのことです。これらが確定していないと、②の定款作成に入れませんし、個人の印鑑証明書の必要通数も判断できません。
定款を作成した際には、前もって③の定款認証を行う公証役場の確認も忘れずに行う必要があります。定款は、紙媒体で作成しても結構ですし、電子定款(PDFファイル)とすることも可能です。電子定款を作成した場合は、4万円の印紙税を節税できるというメリットがあります。その上で、公証役場に予約して定款認証申請(③)をします。
その後、発起人個人の金融機関口座に資本金を振り込み(④)、払込証明書を作成し、登記申請(⑤)、となります。この登記申請をした日が会社設立日です。会社登記事項証明書(いわゆる会社登記簿謄本)は、登記完了後に取得することができますので、それを金融機関に持参し、会社の口座を開設することになるわけです。
2 定款認証及び会社設立登記の同時申請について
さて、ご質問の同時申請についてですが、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」又は内閣府が提供する「法人設立ワンストップサービス」によりオンラインで同時にされているものが対象となります。前述の定款は電子定款に限られますし、また、公証役場とあらかじめ日程調整の上、面談を予約し、申請日当日に公証人とテレビ電話による面談を実施する必要があります。また、④の資本金の払い込みも、その申請をするまでに完了させておかなければなりません。
3 24時間以内処理について
原則24時間以内に登記を完了させるためには、さらに次のような条件があります。
❶役員が5名以内であること
❷必要な書類(定款、就任承諾書など)が全てPDFファイルにより作成され、申請書と一緒に送信されていること
❸必要な書類の署名捺印は、全て電子署名をし、電子証明書が付いていること
❹登録免許税が電子納付されていること
❺公証役場と法務局において、手直しがないこと
これにより、会社登記事項証明書を最短で取得することができますが、あくまでも「24時間以内」であって、申請した日のうちに登記が完了するわけではないことは、注意すべき点です。
4 会社設立登記のファストトラック化
現在、法務局では、会社設立登記について、登記申請件数の多い時期を除き、優先的審査が行われるようになっています。全ての書類をPDFファイルで作成したりオンライン申請せずとも、登記申請日の翌日から3日以内に登記が完了するよう取り組まれています。
通常の手続きでも、定款認証のあと、その日のうちに会社設立登記申請は可能なので、「24時間」とはいきませんが、速やかに会社登記事項証明書を取得できますので、同時申請以外の方法も検討してみてはいかがでしょうか。
是非、お近くの司法書士にご相談してみてください。
司法書士法人 ふくろう
静岡市駿河区中田二丁目7番20号
司法書士 柚木隆志 氏