簡易裁判所で「訴え提起前の和解」をしてはいかがでしょうか。半年後に借主が退去しない場合、借主に対して裁判を起こさずに建物明渡しの強制執行を求めることができます。
合意書(私文書)を
取り交わしていても
「半年後に建物を明け渡す。」という内容の合意書を当事者間で取り交わしていたとしても、借主がその約束を守らず建物に居座ってしまった場合、貸主自ら、借主を建物から強制的に追い出すことはできません。まずは、借主に対して裁判を起こし、強制的に退去させるために必要な「債務名義」と呼ばれる文書を取得する必要があります。
公正証書による債務名義化
当事者間の合意を債務名義にする手段の一つに公正証書の作成があります。知人間でお金の貸し借りをする際、当事者双方が公証役場へ出向いて契約内容を公正証書にすることで、契約内容が守られないときは、裁判することなく相手の財産に対して強制執行の申立てをすることができます。しかし、公正証書で債務名義化できる合意内容は、「〇〇円を支払え」というような金銭債務の履行に限られているので、本件のように「建物を明け渡せ」という内容については強制執行を求めることはできません。
訴え提起前の和解とは
そこで考えられる手段が「訴え提起前の和解」です(「即決和解」ともいいます)。これは、紛争の当事者間で話しがついた場合、簡易裁判所において、裁判上の和解を成立させて和解調書を作成する手続きです。この和解調書に基づき強制執行できる権利は、公正証書と違い、金銭債務の履行に限られません。建物の明渡しを求める場合でも「債務名義」になりますので、いざ相手が出ていかないというケースで直ちに明け渡しの強制執行を求めることができます。
訴え提起前の和解は、建物の明渡しに限らず、請負代金・売買代金の請求やお金の貸し借りにも利用できますので、債権者として是非とも知っておきたい手続きの一つです。
手続きの流れ
訴え提起前の和解の流れは、次のとおりです。
①簡易裁判所へ、和解内容を記載した書面などを提出して申し立てる。
②裁判所で指定された日時に当事者双方が出廷する。
③和解条項について合意し、裁判所が相当と認めると、和解内容を記載した書面(和解調書)が作成される。
④当事者双方に和解調書の正本(債務名義)が交付される。
司法書士にご相談ください
訴え提起前の和解のポイントは、裁判所へ申し立てる際の和解条項案の定め方です。契約が守られず、いざ強制執行しようとしたときに想定していた手続きができないことのないよう、初めにお近くの司法書士へ相談されてはいかがでしょうか。司法書士は、訴え提起前の和解申立書を作成することができるほか、事案によっては、当事者に代わって代理人として裁判所へ出廷し、相手方と和解を締結することもできます。
司法書士法人 つなぐ
榛原郡吉田町住吉572番地の2
司法書士 増田真也 氏