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ビジネス法務

民法(債権関係)改正-契約の解除-

2014/03/05 

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Q 取引先のA社から、注文していた商品の生産が大規模停電により遅れており、納品日に遅れるかもしれないとの連絡がありました。急いで代替の発注先を探し、A社との契約を解除したいのですが、A社との契約を解除することはできるのでしょうか。 A A社との契約の中で、このようなケースで解除することができるという約束が無い限り、一方的に契約を解除することはできません。したがって、一方的に契約を解除することができない以上、A社との話し合いの中で解決を検討する必要があると言えます。 1 契約の解除  一度結んだ契約を白紙に戻すことを契約の解除と言います。  この契約の解除にはいくつかの種類があり、(1)お互いの合意により解除をするもの(2)契約に決められた理由に基づき解除をするもの(3)法律の規定により解除をするものがあります。  今回のケースでは、一方的に契約を解除をすることができるか否か問題となりますので、(2)(3)による解除が可能かどうかを考える必要があります。(2)は文字どおり、契約で事前に定めてあったか否かが問題になりますので、定めていなかった場合は当たり前ですが(2)による解除は出来ないということになります。(3)については、民法に規定があります。すなわち民法541条には、契約の相手方が、契約で定めた義務を果たさない場合は、相当の期間を定めて義務を果たすよう催告し、その期間内に義務を果たさない場合には契約を解除することができるとあります。また、民法542条には、契約の性質や当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に義務の履行がなければ契約の目的を達することができない場合において、その時期を経過したときは、直ちに契約を解除することができるとあります。これは、例えば結婚式で着るウエディングドレスのレンタル契約を締結していた場合において、結婚式当日にドレスが届かなかったような場合のことを言います。(*1)  今回のケースでは、仮に契約で定めた納品日に商品の納品が無かった場合に、これによって契約した目的を達することができないときには直ちに契約が解除できると言え、それ以外の場合でも、相当の期間を定めて催告し、期間内に納品が無ければ契約を解除することができると言えそうです。  しかし、これには例外があり、義務を果たせないことについて、相手方(今回のケースではA社)に落ち度が無ければ、(3)によって契約を解除することは出来ないというのが現在の民法541条及び542条の解釈です。  したがって、今回のケースにおいて、大規模停電という不可抗力によって、仮にA社が納期までに納品できなかった場合には、(3)によって契約を解除することが出来ないということになります。(*2) 2 民法改正の中で  現在、民法改正に向けた審議が法務省で行われていますが、その中でこの点について改正すべきとの声が強く挙げられています。  すなわち、契約の解除というものは、当事者を契約の拘束力から解放するための制度であるから、当事者の落ち度を判断基準とすることなく、解除を認めるべきだというものです。  今回の改正において、このような改正が実現すれば、今回のケースでは納品日を過ぎればA社との契約を解除することができるということになります。  このように、契約の解除という身近なルールについて、現在、改正に向けた審議が行われております。  興味がある方や業務への影響が気になる方は、是非お近くの司法書士へお問い合わせください。  また、静岡県司法書士会では、一般向けの民法改正に関する研修会や、出前講師の派遣等も行っておりますので、興味のある方はお気軽に静岡県司法書士会までお問い合わせください。(電話054-289-3700) (*1)レンタル業者が不可抗力によりドレスを納品できなかった場合は契約を解除できないことになります。 (*2)両当事者が企業である場合等に、仮に納品日を過ぎれば契約をした目的を達成できない場合には、商法の規定により解除となるときがあります。