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ビジネス法務

私は会社経営者です。平成元年から続いている会社の経営を息子に任せようと考えているのですが、株主が私以外に6人います。この6人は、会社を設立した時に名前を借りただけで、出資は全て私がしています。これらの株式の名義を出資した私の名義に変えることができますか。

2021/12/05 [12月05日号掲載]

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名義上の株主との間で覚書や確認書を締結して名義変更するのが通常です。それが難しい場合、名義上の株主との合意により株式を買取る方法、強制的に買取る方法、訴えを起こして判決を得る方法などがあります。詳しくは解説をご覧ください。

 

名義株

 名義株とは、会社において株主名簿上の名義とその株式の真の株主が一致していない株式のことを指します。平成2年の商法改正以前に設立された株式会社では、会社設立の要件として7人以上の発起人が必要であったため、会社設立の際に、人数を揃えるために親戚や知人に頼んで名義を借りて手続を行うというケースが散見されました。その結果、実際に出資をしていない人が株主名簿に株主として記載されてしまっている場合があります。

 

真の株主は誰か

 会社の創業者が全ての資金を拠出しているからといって、それだけで当然に真の株主であるとは判断されません。資金の拠出者、配当金の受領状況、議決権行使の実態、法人税申告書の記載、名義貸しの合理的理由の有無などを総合的に考慮して、真の株主は誰かということを判断することになります。

 

名義株のリスク

 名義株が放置されることのリスクとして、後になって名義上の株主あるいはその相続人が、株主としての権利を主張してくることがあります。特に、名義上の株主の相続人は、当時の経緯を知らないため、株主の地位をめぐって紛争になる場合があります。

 

名義株の対応

 名義株を解消するには、株主名簿を真正な名義に変更する必要があります。その際、当該書換えが真正な名義への更正であるということを客観的に証明できる覚書や確認書を締結しておくとよいでしょう。また、株式の贈与と判断され課税されないために、引受け・払込みなどの経済的負担をした者を証明する資料や、配当の受領状況などの金銭的な動きに係る資料を整えておくとよいでしょう。

 確認書などの締結が難しい場合は、次のような方法が考えられます。

 一つ目は、名義上の株主との合意により株式を買取る方法です。ただし、これは名義の更正ではなく株式の譲渡行為となるため、譲渡制限規定の有無や名義人に対する譲渡課税等の問題が生じることに注意が必要です。

 二つ目は、名義上の株主から強制的に株式を買取る方法です。例えば、あなたが総株主の議決権の90%以上を所持する場合には、特別支配株主の株式等売渡請求を活用する方法があります。

 三つ目は、訴えを起こして判決を得る方法です。名義上の株主が議決権を行使したことがないこと、配当を受け取ったことがないこと、などの証拠を揃え、真の株主があなたであることを証明します。これらの証拠がない場合には、株主としての地位の取得時効を主張することも考えられます。

 また、名義株主と連絡が取れない場合は、所在不明株主の株式売却制度を使うことも考えられます。

 

最後に

 事業承継を考える事案の場合には、このような紛争はできる限り創業者の代で予防しておくことが重要となります。創業者が健在であれば、後継者への承継前等に整理しておくことはそこまで難しくありません。しかし、時間が経つと当事者に相続が発生し、問題が紛糾する可能性が高くなります。トラブルになる前に、お近くの司法書士に相談することをお勧めします。

 

司法書士栗田泰成事務所

掛川市杉谷一丁目7番6号クイーンシティー104

司法書士 栗田泰成 氏