1923年創業の雛人形の着物のデザイン・縫製から着せ付けまでを行う雛人形工房の左京(静岡市葵区幸町2─8)は、来年に創業100周年を迎える。4代目となる望月琢矢専務が中心となり、次なる100年を目指している。昨年に始めたECサイトでの販売が順調に伸びている。
望月専務は、「当社は、建具などの金具職人だった曾祖父が創業しました。雛具も制作していたことから、その後、祖父がひな人形の制作・卸を手掛けるようになり、1968年に㈱望月人形店として法人化、86年に小売りも行うようになり、その後、それまで屋号であった『左京』を社名にしました。当社の歴史を振り返っても、伝統だけにこだわらず、ビジネスとして生き残りをかけ、その時代に合わせて変容しています。私も、伝統を守りながら、今の時代にあった経営を目指していきます」と語る。
大学卒業後、2年間は東京の不動産関連会社に勤め24歳で静岡に戻った。「最初は伝統工芸を取り巻く環境や製作工程、限られた販路など今の会社の体制を見て、厳しい経営状況であると痛感しました」。そんな中、コロナ禍を味方に事業を展開する。「いろいろと試行錯誤した結果、ECサイトでの販売と売り方の工夫に力を入れることにしたんです。今の一般的な住まいに、七段飾りはスペース・価値観ともに合わなくなっています。なので、『コンパクトでシンプルな本物』であることをウリにしたんです」。加えて顔、着物、飾りなどがカスタマイズできることも受けた。
今後は「企業さまに『季節の飾り物スペース』をつくってもらい、その代行業を行ってみたいと考えています。日本人にとって季節感は切り離せないもの。その感性を持ち続けることはきっと良い仕事にもつながると思っています」。
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